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「はあ、美味しかった」


食後のお茶をいれると、イルミスは呟きながらそれに口を付けた。ライナも合わせてゆっくりお茶を口に含むと、気持ちが落ち着いてくる。


「はい。パンがとても」

「私はスープのことを言っているのですよ。ライナの作るスープは美味しいです」

「それは、あ、ありがとうございます……」


イルミスの瞳には熱がこもっており、嘘は言っていないことがライナにも分かった。そんな風に改めて伝えられると、こそばゆくなる。ライナは照れをごまかすように、目の前に置いてあった焼き菓子をひとつ口に放り込んだ。


「ライナ」


ライナが名前を呼ばれてちらとイルミスの方を見ると、いつものように穏やかな、とは言い難い、少し堅い表情を向けられていた。どうしたのだろうとライナが首を傾げていると、小さく息を吸い込む音が聞こえる。


「貴女に、渡したいものがあります」


手渡されたのは、薄くて軽い、小さな箱。


「これは……?」

「中を開けてみて。それが何か分かりますか?」


ライナが、言われるがまま箱を開けると、中には銀色の細い鎖が入っていた。鎖のちょうど真ん中には丸い蓋のようなものが付いている。視線でそれも開けるように促され、ライナはおそるおそる小さな蓋に触れた。