(イルミスさんは、今頃何をなさっているのかしら……)


ほう、とため息が出る度に、ライナは我に返って頬を叩いた。


(だめだめ、しっかりしないと!)


パンデルフィーをイルミスに買ってもらったあの日から、ライナはイルミスのことばかり考えるようになっていた。
別に、好意があるとも、仲良くなりたいとも言われた訳ではない。


ーーただ、名前を聞かれただけ。


たったそれだけのことだが、ライナは本当に嬉しかったのだ。あの青い花を見るとイルミスの優しい瞳を思い出す。
見上げると、広くて果てしない空の高いところに細長い雲が浮かんでいる。イルミスはあの雲のように遠い存在だとライナは思った。


(同じ空の下、イルミスさんも頑張っているわ)


最後にこの市場で忘れられない良い思い出ができた。
あと少し頑張ろうと、ライナは自分を励ました。