ライナはしばらく沈んだ気分で歩いていたが、目的の場所へたどり着くと立ち止まって顔を上げた。

自分なりに出した答えを思い描くように、遙か頭上の木々の先を見つめる。空へと伸びた青々とした樹木は生命力に溢れていて、ライナに希望と勇気をくれる。


(イルミスさんがくれる優しさや思いやりに、私がお返しできることと言えば……)


ライナの視線の先には、あの茂みがある。この先にはいつかイルミスと立ち寄った、キノコの群生地があった。ライナはぎゅっと拳を握り重い袋を持ち直すと、歩みを進めた。


(今日のスープは絶対に失敗できない!)


その目には強い意志が芽生え、足取りはしっかりしたものに変わっていた。

ライナは、ライナなりにイルミスに感謝の気持ちを伝えようと思った。イルミスがしてくれたことに比べればとても小さなことかもしれないが、とにかく、今の精一杯を伝えたい。

イルミスに、また一緒に食事をしたいと思ってもらえるように。


(ーーでも、やっぱり気になるわ。見たって、一体どこまで見たのかしら?)


少しだけ乙女心を覗かせたまま、ライナは茂みの奥へ入って行った。