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ライナは、時々立ち止まってはため息を吐いた。発作のように時折胸が苦しくなり、うまく息が吸えなくなる。


(み、見たって、一体、何を)


呼吸が乱れているくらいならばまだ良いが、先ほどから木に衝突しそうになったり、地面を這っている蔦に足を引っかけたりして、心がふわふわと浮いているように落ち着かなかった。

腕に提げた布袋が、歩く揺れに合わせてカサカサ音を立てる。音の正体は袋の中に入っている、セーラの店で買った夕食の材料や調味料だ。ついうっかり口を滑らせてしまったセーラがいつも以上におまけしてくれたため、持ち手部分が腕に食い込みそうなほど重い。


(……私、本当に何も知らずに過ごしていたんだわ)


恥ずかしいと思う気持ちと一緒に湧き上がるのは、激しい後悔だった。
もうイルミスには会うことはないからと、自ら感情に蓋をして早々に諦めてしまっていたことを情けなく思う。イルミス本人は、なりふり構わずライナのことを助けてくれていたというのに。
昨日イルミスがライナに言った〝どこかでまた倒れていたら〟という言葉は人から聞いた話ではなく、実際その目で見た出来事だったのだ。

もし、自分の大切な人が倒れてしまったら。
怪我をしてしまったら。

ライナが自分をイルミスの状況に置き換えて考えてみたところ、例えようのない恐怖を感じてしまい思わず身震いした。ライナは「自分はきっとただおろおろと戸惑うだけで、イルミスのように勇敢な行動はできないだろう」と、起こってもいないことを想像して落ち込んでしまう。