「でもまあ……騎士様は、ライナが倒れた時も慌てていたからねえ。他の女が入り込める隙なんて実際はありゃしないよ」


だから安心しな、と声をかけられた。
その言葉を聞いて、ライナは信じられないといった表情をセーラに向ける。


「私が倒れた時? ……あの時はセーラさんが見つけてくれたのではなかったのですか?」

「それは違うよ。倒れているあんたを見つけた騎士様が、あたしの所まで知らせに来てくれたのさ。ーーあの時の取り乱し様ったらなかったよ」


その時のことを鮮明に思い出したのか、セーラは小さく笑い声を漏らしている。

イルミスはあの日、ライナに会いに来ていたのだ。
もし彼がいなかったら、今頃どうなっていたのだろう。そこまで考えて、ライナは抱きしめるように自分の震える両腕をさすった。

そんなライナを置いてきぼりに、セーラはなおも続ける。


「〝ライナが怪我をしていないか調べるために、肌を見てしまいました〟って律儀に報告までしてきてさ、本当にあの騎士様って……あっ、この話はあんたには内緒だった!」

「……」


ぽろりとセーラの口から出てきた事実に、ライナは飛び上がりそうになった。


「悪いんだけど、今のは聞かなかったことにしてくれない?」

「そ、そんなの……」


無理に決まっている。

ライナは顔を真っ赤に染めたまま、次々と明るみになるイルミスの行動を知って固まってしまった。