イルミスが想像以上に切羽詰まってライナを探していたことを初めて知り、ライナはくらりと目眩に襲われた。


「どうしよう、私……そんなに心配させてしまっていただなんて思わなくて」

「あたしはいつライナが紹介してくれるのかとずっと待っているんだけどねえ。……そんなに不安そうな顔をしていると、すぐに他の女に取られちまうよ!」


近付いてきたセーラは、そう豪快に笑ってライナの肩を優しく叩いた。


「なんならあたしが名乗り出てみようか? これでも若い頃はーー」


とんでもない冗談を言い出したセーラの後ろに、何とも言えない表情をしたダグラスが見える。ライナは慌ててセーラの服の袖を引っ張った。


「セ、セーラさん、ダグラスさんに思いっきり聞こえてます……」

「あら?」


がっくりとうなだれているダグラスを見ても、セーラはけろっとしている。ライナがダグラスに何か言葉をかけようと口を開いたが、ダグラスはゆっくりと首を横に振った。


「はは、いいんだよライナ……ちょっと市場に仕入れに行ってくる……」


ーーパタン。

力なく閉められたと感じられるほど小さな音だったため、ライナはおろおろと心配そうにセーラを見た。そんなライナに「大丈夫、大丈夫」とびくともせずにセーラは笑っている。

ふと真面目な顔つきになったセーラは、眩しいものでも見るように目を細めた。