ライナが思わず声を上げると、イルミスは動かずそれをただじっと見つめている。
おそるおそる近寄ったライナに、そっと手渡されるハンカチ。


『私も、もっとライナと話をしたい。しかし、話さなくても分かることがあるのだと知りました。……さあ、家まで送りましょう』


〝話さなくても分かること〟を強調された気がして、ライナは弁解もできずにただ黙るしかなかった。家は元より目の前にあるのだが、イルミスに手を引かれるがまま歩く。
すぐに戸口へたどり着いて、イルミスは扉の中へ入るようライナを促した。


『明日の夜、また来てもいいだろうか』

『は、はい。もちろん!』


断る理由などどこにもない。すぐに決められた来訪予定に、ライナの胸は喜びでいっぱいになった。


『ひとつ我が儘を聞いてもらえるのなら、久しぶりにライナの作ったスープが飲みたい』

ーー出来ればキノコのスープを。


付け加えられたひとことに不意をつかれ、ライナはぽかんと口を開ける。そのまま、必ず戸締まりをするよう強く言い置いて、イルミスは帰って行った。


ーー言われた通り戸締まりはしっかり行ったが、ライナはいつまでも寝付けなかった。