「ーーそれで、聞きたかったことは聞けたのかしら?」


ライナが悩んでいたことを、ミレーヌも気にかけていたのだ。ライナは曖昧に答えた。


「……半分くらい、でしょうか」

「あら、意外と欲張りなのね」


ライナの回答が気に入ったのか、ミレーヌは弾けるような笑顔を見せた。


「ライナが何を不安がっているのか分からないけれど、昨日の騎士様を見ていたら何の心配もいらないと思ったわ」


その言葉にライナは顔を上げ、ミレーヌを見つめる。彼女は、ため息混じりにうっとりと乙女の表情をしていた。


「あの煌びやかなお衣装が汚れるのも厭わずに、森の方へと急ぎ向かっていくお姿を見てしまったもの」


昨日ライナの家の前で待っていたイルミスは、祭礼用の制服から着替えてはいなかったのだ。暗かったので見えなかったが、裾などは泥で汚れてしまっていたかもしれない。

更に、彼の膝を地面に着かせてしまったうえに、長い時間草むらでうずくまっていたライナのことを包んでくれたのだ。〝かもしれない〟ではなく、汚してしまったと断言できる。

ライナは、改めてイルミスにとんでもないことをさせてしまったのだとひとり青くなった。


「それだけ情熱的に思われているということよ?」


〝昨日のこと〟を思い出して表情を浮かないものへと変えたライナに、ミレーヌは慰めるように言った。