そう思って服の裾を鼻につけて自分の匂いで紛らす。すると後ろから誰かに抱きつかれる。

…まあこの場所に俺以外にいるのは新田だけなんだが。



「…ありがと、れーちゃん」



すこし、甘えた声、だけどどこか嬉しさが残る声。

なぜ、こいつの甘えた声は嫌だと思わないのだろうか。


俺から離れて俺の顔を伺うように下から覗き込む。目は少し赤くなっていた。

やっぱり怖かったのか。 泣くことを堪えきれなかったんだろうな。



「大丈夫か?」

「うん。 澪ちゃんが助けてくれたから」



そう言って少し微笑むがいつものあの明るい笑顔ではなかった。

なんだろう。なんだか腹が立つ。




俺の知らないアイツがいるのが気にくわない。