俺は前髪を後ろに流すと口を開いた。



「あのさぁ」

「な、なにかな?」



可愛いと思っているのか、上目遣いで俺を見る。



「あんただれ? 俺のなにを知ってるの? てか、あんたみたいなケバい女に興味ないんだけど」



思ったことを口に出すと目の前の女は目を見開いてそして涙を浮かべる。

そして聞き慣れた言葉を俺に吐き捨てる。



『最悪な男だ』と。



はあ、一つため息をついて俺から離れて行く女の背中を見る。

なあーにが『最悪な男』だ。 お前が勝手に告白してきたんだろうが。

イラつきながら友達が待っている下駄箱に向かおうと角を曲がったらその友達2人と目があう。 2人は苦笑いを浮かべて明後日の方向を見る。


……こいつら、聞いてたな。



「ひっさー、ダメだよ。 『あんただれ?』なんて言ったら」

「そうだよー。 ひっさー、まじ卍」

「くらちゃん、俺のモノマネ似てなさすぎだから。 あとさかもっちゃん、卍今流行ってるの?」