時間とは本当に過ぎるのがあっという間で土曜日、サッカーの試合当日になった。




「おまたせ〜」




「おはよう亜梨沙」




私と亜梨沙は駅で待ち合わせ電車に乗った。



試合会場は案外近くすぐに着いた。



「割と大きいね」


関心しながら二人で会場内に入りいい感じに見やすいベンチに腰掛けた。



「真美ー!」




後ろから声が聞こえ振り向くとそこにはユニフォーム姿の春人と山中君、そして松原君が向かってきていた。




「来てくれてありがとな」



春人が私の眼の前まで来て嬉しそうに笑う。



「うん、頑張ってね」



「坂峰さん、春人こう見えてすっごい緊張してるよ」




そう言いながら松原君は私達に近寄ってきた。



自然と鼓動が速くなる。




「ミツ余計なこと言うな」


二人は笑いながらじゃれあいだした。



仲のいい二人。



松原君がこうして私に話しかけてくれるのは春人の友達だからだ。




友達の彼女、それか単なるクラスメイト。



松原君の中で私はそれだけ、ただそれだけだ。




だから私がおかしいんだ。



二人のじゃあう姿を見てそう前よりももっと強く思った。




やめよう、もうやめよう。




私は春人が好き、それだけでいいんだ。






「ミツせんぱーい!ここのいたんですね探したんですよ」



パタパタと二人に緩く結んだ髪を揺らして誰かが近寄ってきた。





「ミツに告白してきたマネだよ」




ニヤリと笑いながら春人が私に耳打ちしてきた。



そうだ、この子が可愛いと人気のサッカー部のマネージャーだ。





女から見ても可愛らしい子だ。



「あ、こんには!ほら行きましょう先輩」


私と山中君と話していた亜梨沙に軽く会釈して松原君の背中を押して行ってしまった。




「じゃあ俺らも行くな!」




「うん頑張ってね応援してるから!」




手を振って私は春人を送り出した。



ズキリと痛む心を隠して。






「さっきのマネの子松原といい感じなのかね?」



横を向くとニヤリと笑う亜梨沙。



「春人が松原君あの子に告白されたって言ってた」




やっぱりねと言いたげにウンウン頷く亜梨沙に首を傾げた。



「すっごいオーラ出てたじゃない、スキスキーって」



そう言ってからあーそっかと亜梨沙は笑った。



「真美はこういうの鈍いもんね」





確かに少し鈍いかもしれない。



人の感情とか気持ちを読み取るのは大の苦手だ。




「それとまぁここだけの話ね、私松原は真美のこと好きだと思ってたのよね〜」




「え?」




いきなりの突拍子もない亜梨沙の言葉に持っていたペットボトルを落としそうになった。





心臓がドクンと跳ねた。



「だってさー立川と真美が付き合う前明らか松原は真美のこと見てたよ」




なに、それ。




「…そんなことないでしょ」




「あるある!だからこの二人がくっつくかなあと思いきやまさかの立川と真美が付き合ってさビックリビックリ」




私はそんなの知らない。



全然知らない。



「と、まぁ本人に聞いたわけじゃないし私の勝手な想像にすぎないんだけどねえ」




「そうなんだ…」




私はそれしか答えられなかった。




なんだかヤケに喉が渇いて手に持っていたペットボトルを開けてお茶を流し込んだ。