私はそれから逃れるかのように窓を閉めた。
なんだかサッカー部の練習姿を見てはいけない気さえした。
椅子に腰掛けて呆然としてしまう。
机の上に開かれている本すら目に入らないほどに。
もう頭がごちゃごちゃだ。
そんな頭の中ゆっくりと席を立ち黒板の前に立った。
白いチョークを握り黒板に「まつばら」とひらがなで薄く書く。
今自分は何をしているのだろう。
そう頭で整理できないほどに頭の中はキャパオーバーしていた。
ただその黒板に今自分が書いたそれをゆっくりと指でなぞる。
まつばら、松原君。
好き。
松原君が好き。
何度も唱える。
少しの間そうしていると、もう止めろとも言いたげにチャイムが校内に鳴り響いた。
黒板をなぞっていた手をダランと下げて我に帰る。
何故だか一気に体温が上がっていくように体が熱い。
馬鹿みたい、恥ずかしい。
私は何をしているんだ。
さっきまで自分がしていた行為を恥じてサッと黒板消しで、自分で書いた文字を消した。
何度も何度も、消えてと願いながら。

