何かと鋭い香織さんなら気づいて当たり前だと思う。


自分の息子のことだし、
香織さんは優しいし。



『……えぇ』



『なら……せめて香織さんの前だけでも
本当の彼でいさせてあげてください。

こんなことあたしが頼むのはおかしいし、
失礼だってことは重々承知です。

だけど…あたしにできることは
これぐらいしかないんです…お願いします…っ!』




あたしは香織さんに精一杯、頭を下げた。

隼斗、いつか言っていたよね?


“……お前のためなら
何万回でも頭ぐらい下げてやるよ”


あたしも隼斗のためなら
頭下げることなんて軽いもんだよ。



『…愛咲ちゃん。頭あげて?』



そういった香織さんの声はとても穏やかで……あたしはその声につられるように頭を上げた。



『愛咲ちゃんって本当にいい子すぎて困っちゃうわ。
わかったわ、愛咲ちゃんの頼み聞いてあげるわ』