「無理なんかしてないよ」



元気そうに笑って見せるけど
母さんには効かないみたいで表情は硬いままだった。



「もう…演じるのはやめたら…?」


「えっ…?」



母さんの口から出た言葉に思わず息をのんだ。


……俺が演じてるって、気づいていたんだ。



「気づいてたんだ…」



ずっと、バレていないと思っていた。

小さい頃からこんな感じだったし、
本当の俺なんか分からないと思っていた。


「当たり前でしょ?
何年あなたの母親やってるの思ってるのよ。

ずっと前から気づいていたわよ。
でも、言わなかった。
あなたがそれでいいと思ってやってると思ってたから」



母さん……

母さんが俺を想ってくれている気持ちが
ひしひしと伝わってきてじーんと胸が熱くなる。