「香織さん、それは違います。
これでよかったんです」



そう……。

きっとこれでよかったの。



「えっ…?」


「だって、たとえ同居してなくても
あたしは隼斗のことを好きになってたから…」



どんな形でもあたしはきっとキミに恋した。


だって、本当はずっと前から好きだった。
一緒にいるのが当たり前すぎて気づけなかった。


こうやって離れてみて
改めて、隼斗の大切さに気づけたんだ。


だから……これでよかったんだ。



「愛咲ちゃん…愛咲ちゃんみたいな子に出会えたあの子は本当に幸せ者ね」



香織さんはそう言うとぎこちなく微笑んだ。

その笑みに少し切なさを感じながらも
あたしは香織さんに笑顔を向けた。



「いや、あたしが幸せ者なんです…。
あたし、この恋を絶対忘れません」



あたしはこの先もずっと忘れない。


キミが結婚してあたしのこと忘れてしまってもあたしはキミに恋したことを忘れないよ。


キミに恋をすることができたあたしは
きっと誰よりも幸せ者。


あたしは隼斗から
たくさんの幸せと涙をもらったよ。


それだけで、もう十分。
だから、あたしはキミとサヨナラする。


バイバイ……隼斗。