「母さん、準備ができたよ」


「早かったわね~、それと隼斗わかってる?
相手は女の子。手出したらダメよ?」



何を考えているのか
ニヤニヤと口角を上げて母さんは言う。

この人は息子に向かってなんてことを言うんだ。



「わ、わかってますから!!」



多分……大丈夫。

正直、“絶対に手を出さない”そう言える自信はない。
だけど、無理矢理なんて俺はイヤだからな。


まあ、だからといって愛咲を
手に入れられる自信もないけどな。



「それなら、いいけど~♪

じゃあ、行きましょうか。」



俺はスーツケースをガラゴロと引いて
徒歩3分もかからずに隣の家…つまり愛咲の家に着いた。


母さんがインターフォンを鳴らすと、
愛咲の母さんが中からスキップをしながらでてきた。


うわぁ、愛咲にこういうところそっくりだな。


さすが、親子……。
俺も母さんと父さんと似てるところあんのかな。



「さぁ、上がって上がって~!」



いつ見ても綺麗な愛咲の母さんに
“おばさん”なんて言えなくて


下の名前で菜奈さんと呼んでいる。