『それでは、位置についてよーい、パンッ!』
一斉に走り出して、愛咲にバトンが回ってくる。
よし…走り出しは大丈夫だ。
前とはまるで違う愛咲の走り方。
ちゃんと速くなってんじゃねーか……。
だけど……あと少しというところで
ぶつかられて転倒してしまった。
足からは血が出ていて、見ていて痛々しい。
それなのに愛咲は立ち上がって痛そうに
顔を歪ませながら少し足を引きずって走り出した。
痛いはずなのに、走るペースをあげて何とか三位の後ろに並んだ。
そろそろ、俺のところにくる。
どんどん近づいてくる愛咲の顔はもう半泣き状態。
必死に泣くのを堪えて、俺にバトンを渡す。
『ごめんっ…隼斗…』
バトンを渡された時にそう言われたんだ。
その時、もう愛咲との関係とかのことは頭から抜けていた。



