【愛咲side】



「なぁ…、アイツまた来てんぞ?」



隼斗が眉間にシワを寄せて
不機嫌そうに教室の入口付近を睨む。



「あぁ~、宇都宮くんじゃん」



あたしと隼斗の
視線の先にいるのは宇都宮くん。


なんと!学園の王子様の宇都宮くんがこのところほぼ毎日あたしの教室に来ては、少し話をして自分の教室に帰っていく。


その日もいつもと変わらず、
何もなく過ぎるのだと思っていたのに…



「藤沢さん!」



いきなり、名前を呼ばれて振り向くと
宇都宮くんは何か真剣な面持ちであたしを見つめていた。



「は、はい?」



あたしが返事をすると、宇都宮くんは「こっちに来て」とでも言うように手招きをした。