「酔って見る夢」

白い薔薇が香る部屋の中で男は女を抱く

赤い薔薇を想いながらその細くて美しい手を伸ばす

(・・・違う、ちがう、わたしじゃない・・・)

「なぁ、赤い薔薇を部屋に飾れよ」

「おまえに似合うのは赤い薔薇だろう」

男は背後から女の首すじに口づけを落とし

女の抵抗を軽々と止めさせて寝室に連れて入った。

男は女の髪に優しく触れながら

違う方の手を女の白い肌に少しずつ這わせていく

『逢う魔が時』

お手伝いさんが来ない日に男はやって来る。

男は酔って忘れる夢を見る

甘美な泡沫の酔狂

これは狂った夢の続きなのだと

男はいつも女にそう言い聞かせる

愚かで憐れで悲しい夢の中なのだと

男は女の耳元に囁きかける

「夢なのだ、オレは酔っていて

これはすべて夢の中の出来事なのだと」

男は女に頷かせて そうして満足して

また嬉しそうに女に手を伸ばすのだ・・・

憐れな哀れな二つの獣

『黒い瞳と赤い瞳』

いつまで経っても どれほど過ぎても

男は夢から醒めたくないと言う。

白い薔薇の香りに包まれながら

男は夢の中から出てこない・・・