ひと月の妹


(知り尽くした その肌をそのすべてを

別の男にくれてやるのか・・・)

背中越しに「クスクス」と笑い声が聞こえてくる。

女はこちらに向きを変えると白い手で男の顔を触りながら

「信也さん、わたしはねぇ、とても欲張りなのよ。」

「だから これからも変わらないわ。」

「キミは狡いんだなぁ~」

佳澄は甘い女の顔で彼の唇を指でなぞった。

「ねぇ~ 続けて」

これは罪になる前の余韻だろうか?

 
あの美しすぎる男に隠し通せるとでも思っているのか?

(キミはまだ世間知らずなんだよ・・)

 
強く打ちつける雨音の激しさで

今はすべてのことを隠すように

ホテルの薄暗い窓辺に降る雨が

男女の秘密を隠し覆った。