(欲張りな関係)
白いつややかな女の手に同じく
白い男の手が優しく重ねられて
まるで、それが合図のように
ふたりの唇がゆっくりと重ねられていく。
ガラス窓には叩きつける雨と立ちのぼる湯気で
ふたりの男女はすぐに見えなくなった。
「お嬢様・・・」
「やめて、ふたりのときは・・・」
「名前を呼んで・・」
「か、佳澄・・・」
早乙女佳澄の秘書について もう3年になるだろうか。
佐藤信也は、佳澄より3歳年上の29歳
秘書としてお嬢様の佳澄と行動を供にするうちに
彼女の甘い蜜に溺れた。
彼女のすべてを知り尽くしているのに
早乙女財閥のお嬢様である佳澄には
政略結婚が控えている。
