もぐもぐもぐ……
「お、おいしい!」
冷蔵庫に入れていたから少しカチっとしてるけど、それでも市販のものと比べ物にならないくらいふわってしてて。パンについてる焼き目と、切り落とされていないパンの耳が見た目以上にいいアクセントをしている。
お腹が特にすいていたわけでもないのに、ぺろりと私は平らげてしまった。
「おいしかった?」
「とっても!」
興奮気味に私は返事した。
「あほ面。」
彼がくしゃりと笑いながら呟く。
また悪態ですか…。
そう思いながらもなぜだか悪い気はしなかった。
パンをくれた速水さんは優しい。
ゴミ回収もコーヒーを作ったことを気遣ってくれたことも。
でも今みたいに口がたまに悪くて、
私をからかってきて、優しいのか意地悪なのか。
あの告白も、もしかすると意地悪の一種……だったり。
「欲しいときはいつでも言って。」
流し台に体重を預けたまま彼は言った。私はこくんと頷く。
なくなるコーヒー。
私のも、彼のも。
変なの。
二人っきりがすごい嫌だったのに、今は別に、
特別に嫌とか逃げたいとか、
そういう感情は………うん。


