給湯室よりも向こう、白いドアの会議室前まで私は歩み寄る。なんとなくぬきやしさしやしで。
給湯室のドアは開けっ放しで誰かが電話しているようだったけれど、後ろめたい気持ちからその誰かに見られてしまわない様すばやくそこだけは駆けた。
肝心の会議室のドアノブには札はかかってはおらずひとまず安堵、
続けて音をたてないように耳を傾け中の様子をうかがうのだが、給湯室からのこそこそと喋る談話の声が邪魔をしてくる。
……う~ん、大丈夫かな?
札はないけどどこか感じる怪しい雰囲気。勘というやつだ。
ドアの上部についている小窓からこぼれる光が電気がついているように見えるけど、太陽の光がこぼれているようにも見える。
やっぱりやめとこうかな、
でもあのファイルは絶対必要だし…。
交差する思い―――行こうやめとこう、行こうやめとこう何度も私は繰り返す。
ま、品川さん大丈夫だって言ってたし信じてみようかな。 だめだったら長嶋さんに相談だ、なるべくそうなってほしくないけど…。
そっと私は手を顔の前で合わせた。
お願いします、どうか会議していませんように。していたとしても、ファイル探させてもらえますように。というかそもそもファイルここにありますように。
コンコン。
「失礼しま……す。」
腰を曲げおずおずとドアを開けた。
頭を下げているから、つるつるの灰色の床が目の前にまず入ってくる。完全に開くまでに途中から室内の電気が漏れてきて、使用中だったことが分かった。
そして
「内川どうだった?」
その声で使用している人が誰なのかも。
藍色のスーツが2番目に目に入った。


