「じゃぁ俺ここですけど、市田さん大丈夫ですか?
バス停までよかったら送りますよ?」
「ううん、本当に大丈夫。
歩くの付き合ってくれてありがとう。今日も誘ってくれて本当楽しかった。」
「ならよかったです。」
内川くんの笑顔が私の心にぽっと小さな火を灯す。
「あ、市田さん!」
じゃぁと言いかけた私だったが、彼のその言葉に「何?」と聞き返した。
内川くんは黒の真四角のカバンの中から、携帯電話を取り出すとポチポチと何回か画面をタップした。何だろうと思いながらなんとなく私も自分の携帯を取り出す。
すると数件、内川くんから連絡が届いているようだった。
「何て送ったの?」
直接言えばいいのにと私は笑う。
「速水先輩の連絡先送っときます。
さっき、長嶋さんの連絡先ゲットするの手伝ってくれたから。」
「……え?」
ピタッと笑いが止まった。
そうだ、3つ目。
内川くんは長嶋さんの連絡先が知りたいとのことで、私が長嶋さんに確か言ったんだ。
「内川くんに連絡先教えたらどうですか。」 って。それで私が送ったんだっけ、長嶋さんの連絡先を、内川くんの携帯に。
「速水さん、女の子のお誘いは破らないと思うんで、市田さんからも速水さんに飲みましょうって送っといてください。」
「や、いや、内川くん?」
「じゃぁおやすみなさーい!」
手を振りながらキャンキャンと内川くんという名の犬が駆けていく。
も、もう!
なんでこう内川くんって去り際に爆弾を落としていくんだろう!
「どうしよう…。」
速水 至
私の携帯にその名が表示されている。


