「速水先輩、来たらよかったのにな。」
白い息が内川くんの口から漏れた。
「ねぇ。」
「んー?」
「速水さん…なんで来なかったの。」
もしかして、私のせい?
「理由は聞いてないんですよー、俺仕事終わって会社前で待ってたんですけどね、
やっぱいけねーって連絡来て。」
「そっか。」
「まぁ朝から忙しそうにしてたから大丈夫なのかなって思ったんですけど。」
電車の音が遠くから聞こえてくる。
「じゃぁ仕事があったのかな。」
「かもですね。
あまり誘って振られることないから、大丈夫だと思ったんですけどね。」
「……そう、なんだ。」
「速水先輩がいたらもっと楽しかったのにな~。」
コートのポケットに両腕を彼は突っ込んだ。
内川くんが言う“あんまりのタイミング”に、私ははまってしまったのか。
「私がくるって知ってたの?」
「速水先輩がですか?」
こくんと私は頷く。
「知ってましたよ。」
「そっか。」
なら避けられてるって可能性はちょっとは減るのかな。
「朝会った時に言ったんですけどね、長嶋さんたちオッケーでーすって。」
「朝?」
「朝です。」
え、それじゃあ…朝私が来るってことを知って、夕方やっぱり行くのやめようって思って避けた…、ともいえてしまう。
「でもまた今度誘えばいんですから、懲りずに4人で改めて飲みましょ。」
「うん。」
また今度、か。


