「鬱憤でも溜まってたんですか、お酒そんなに強くない市田さんがこんなに飲むなんて。」
こんなにといわれても、どれだけ飲んだかなんて分かんない。
「うーん…。」
飲んでいる最中の記憶が浅い中、覚えていることは2つか3つ。
1つ目は本当にくだらない会話。
「今年もクリぼっちだー」って内川くんが確か叫んでた。ってくだらなくはないか、ごめん内川くん。訂正、内川くんの悲痛の叫びの話だ。
2つ目は、速水さんの話。
彼は来なかった。
「来れない」か、「来なかった」か違いは分からないけど、でも来なかった。
3人で私たちは飲んだんだ。
「寒いですね。」
はぁっと彼が白い息を吐く。
「ね、内川くん。」
「ん?」
「この間より飲んでないみたいだけど、私のせい?
一番飲みたがってたのにごめんね。」
頬にあたる冷たい風とあの人による空虚感が酔いをさましてくる。
「飲んでます、飲んでます。」
彼がかわいげな表情を浮かべる。弟がいたらこんな感じなんだろうか。
「強いていうなら市田さんが今日飲んでるから、しっかりしなくちゃなって。」
「…ん?」
「人って守りたい人がいるとちゃんとしようって思うっていうか、俺がやらなきゃ!みたいな使命感が出てくると思いません?
そんな感じです、俺は今。」
彼はそう言って照れくさそうに笑った。
「速水さんには守られる立場なんだね、じゃぁ。
この間は全然ピシッとしてなかったから。」
からかうとばつが悪そうに彼はまた笑う。


