意地悪な片思い


「でも市田は、もう答え聞くつもりなかったんじゃないの?」
私は黙った。

「あの時、俺がまだコーヒー残してたことを知っておきながら、

“変な人”って言って逃げて。」

「それは……」

「市田はさっきの居酒屋でもシャットアウトした。」

「そんなの、」
 言えない。

ただの意地張りだなんて、とてもじゃないけれど。

「そんなの―――。」
 冬の寒さのせいじゃない。悲しみか怒りか焦りか嫉妬か、どれにも当てはまらないなんとも言えない感情が湧き上がって、それらが私の声を震えさせていた。

何も言わない私に
「ここで黙るのはずるいな。」彼が小さく吐露。

速水さんは大き目な石を蹴とばした。

「…俺、

避けられてたって分かって傷つかないわけないんだけど。」

「あっ。」
 言葉にならなかった声をだして、見上げた彼は痛そうな表情を一瞬―――


そしてすぐに笑って 

「でもそれ以前に長嶋なら上手くやるんだろうな。」
 小さく笑った。

「なんで、長嶋さん…。」
 呟いた私に彼は私の頭に手を置く。

「お前に嘘ついたことは一度もないよ。」
 ぼそっと優しい声。

何か言おうとした私に

「って言ったところで信じないくせに。」
 速水さんは悪戯な表情を浮かべ私の頭を小突いた。