意地悪な片思い


「俺とは?」

 へ?と言ってしまいそうになった言葉を飲み込んだ。

「またそのからかいですか、しつこいですよ。」
 笑いながら私は視線を地面に移動させる、速水さんの方はさっきからまだ見ていない。

「大体速水さんなら
他に飲む方いっぱいいらっしゃるでしょう?」

「例えば?」


「木野さん。」
 その名前が浮かんだけれど、言うのをやめた。やけに“リアル”だと思ったから。

「内川くん言ってたじゃないですか、
社内で人気だって。」

「だから?」

「だから他の部署の方とか…。」

「あぁー。」
 彼はそういえば、と思い出したように言った。

「え、でも市田とは飲んでないんだけど。」

「もうしつこい!」
 カッとなって声をあげた私とは対照的に、ハハハと彼は笑い声をあげる。

肝心なところでお得意の悪態を披露しないくせに、
どうでもいいところで私をおちょくる―――それが彼の根性らしい。