怒る…とまではいかないけれど、まだ速水さんは不機嫌そうにそっぽを向いているので私は無難に長嶋さんの話題を出すことにした。
「長嶋さんはちゃんと帰れましたかね。」
「……大丈夫だよ。
今頃一人ぬくぬくこたつにでも入ってるんじゃないかな。」
穏やかな口調に、話題に気を遣うことでもなかったのかと安堵する。
また一つ向かいの家の2階の電気が消えるのを傍観しながら「いいなぁ長嶋さん。」とぽつりとつぶやいた。
「長嶋と飲んだときどんな話するの?」
「うーん、仕事の話とか長嶋さんの趣味の話とか。専ら聞き役ですよ。」
「俺も内川のとき聞き役。」
「そうでしょうとも。」
私と速水さんの小さな笑い声が場を占める。
「長嶋と飲むのがメイン?」
「そうですね、他の人とはあんまり。」
そう言って少しだけ惨めだと思った。
社内で人気な速水さんは飲みに誘われるなんてしょっちゅうなはずだ、内心私のことを寂しいヤツ、そう思ったかもしれない。
「孤独な奴だな」とからかわれるのも最悪覚悟していた。


