「給湯室全然市田寄り付かないし、サンドイッチ頼むどころか昼間ばかみたいにおにぎり食ってるし。」

「…仕事が手いっぱいで休憩避けてたんです。」

「昼食は?」

「お、おにぎりブームです。」

「違うだろ、だってサンドイッチっていうかパン自体避けて、おにぎりおにぎりおにぎりおにぎり。」

「おにぎりブームですもん、
おにぎりおにぎりおにぎりおにぎりおにぎりおにぎりおにぎりおにぎりおにぎりおにぎりおにぎりですよ!」

「なんだよ、それ…。」

 強気でわがままな末っ子みたいに反論、
すべてばれちゃってるのに。

速水さんってやっぱりすぐ私のこと分かっちゃうんだ。
給湯室に一度も行っていないのも
ここのところお昼がおにぎりばかりなのも―――。

速水さん透視…できるのかな、
ってばかみたいなこと私また思ってる。


今だってむちゃくちゃなこと言っている。
そう分かっている、それでも―――誤魔化すにはちょうどいい。

恋じゃない、恋じゃ、ない。
全然気になってなんか、ない。

あなたのその危ない香りの虜になんてなってない。


「俺のこと少しは気にしてるのかなとか思ってたけど…。」
 淀む彼の声。

「……全然、そんなことなかったか。」
 はははと彼は小さく笑った。

「そうですよ…。」
 私も笑い返す。

このまま飲み会が終わってほしい、
90パーセント。

透視してよ、
その気持ちは10パーセント。


「長嶋たち遅いね。」

「本当ですね。」

 
 また料理の話が始まった。