意地悪な片思い


 すっかり日も暮れてきたオフィス。

「あれ、市田さん月曜から残業?」

「はい、ちょっとだけ残ってて。」
 声をかけてきてくれた、隣の席の品川さんに私は苦笑いを返した。彼女はもう上がるみたいで、鞄に筆記用具などをしまっている。

「じゃぁ、悪いけどお先失礼するね。」

「お疲れさまでした。」
 眉を八の字に曲げた彼女に私は頭を下げた。

 時計の針は17時を回ろうとしている――せめて仕事はちゃんとやらないと…。
一息入れ直し、私は資料室から取ってきたファイルを見つめた。


 それから3時間ぐらい経った頃、人も随分減ったオフィスで、ちょっと休憩…と私は伸びをした。

電気はすべて落とされ個別のデスクのライトが各々光っている。残業している人が誰だか丸わかりだ。

速水さんの席の明かりはやっぱりついていないけどさ……。

「市田さん今日あとどのくらい残るの?」
 同じく残業中だった、同じ部署の男性社員さん田中さんが声をかけてくる。

「あと1時間もあれば。」

「そっか。」
 俺もそのぐらいに今日はしとこうかな、そう呟いて、彼は疲れた目をしてぐーんと腕を天井に突きだした。

長嶋さんも残業していらっしゃるけれど、そろそろ終われるみたいで何か軽い書留を施している。

「私はコーヒーでも飲もうかな。」
 あと1時間も頑張らないとだし、息抜きに。