意地悪な片思い


 残る機会は資料室に行くときだけ。
お昼休憩という大本命も終わり、午後2時を回ろうとしている今、彼と話せる機会はそこぐらいだろう。

とっても望みは薄いけどさ、でもこれを逃したら、今日話せる可能性はゼロに近い…。

「市田、資料室もう行ってみたか?」

「これからです。」
 長嶋さんに声をかけられ、私は慌てて席を立つ。

いる…かな、お願い。
出会い運もあるんじゃなかったの?
身に着けた“それ”に半ばやつあたりしながら、私は廊下に出た。


「お疲れ様です。」

「お、お疲れ様です。」
 メインルームに入るところだったらしい人に丁度ぶつかる形になって、私は少しびっくりした。ともあれ、何とか挨拶を返して、一番奥の資料室に向かう。

「4C、4C。」
 用があるファイル番号の名を、私は小さく口ずさんだ。忘れちゃいけないからね。

 まだまだお昼だってのに、どこか暗くてひんやりとした室内を進み、私は目的のファイルを手に取る。
パラパラっと中をその場で覗いても見たけれど、中身もバッチリ揃っている。

だいぶ前、私が整理しておいたおかげかな、なんつって。


 そのまま私は足早に資料室から出た。会議室からは、何も音が聞こえてこない。
そこにその人が缶詰めになってることではなさそうだな。

廊下を私はすたすたと歩く―――やっぱり会えない…か

って

「え?」

 トントンと私の肩を誰かが叩いた。