「市田、今なんて……」
「わっわぁー!!!」
「え、ちょっ」
大声を出して、彼の声を遮った私に速水さんはためらいの声を上げる。
「じゃ、じゃぁそういうことで!おやすみなさい!」
「お、おい!」
速水さんが私にまだ何か言いかけてるってのに、私はプツリと電話を切った。
ドクドク…もう彼の電話は切れたってのに心臓が跳ね上がってる。
「わっ。」
私は慌てて枕の下に携帯を隠した―――着信音が鳴り響き始めたから。
電話の相手は当然速水さん。そうに決まってる。
繋がらない電話を長時間待っているような人じゃないのに、今は私が出るまで彼ずっとかけ続けるような気がするよ。
当然理由は、さっき私が口走っちゃったあの言葉のことを聞きたいってので。
私、思わず、速水さんに好きって……
あんなに言えなかった言葉が、あっさりぽろっと。
なんで?おかしくない?
枕で押し付けるだけじゃ足りないのか、着信音はまだ微かに聞こえてる。そいつを消すかのようにごろんと寝返りを私は打った。
今日のところは許してください。
自分でも混乱しているというか、口走ってしまった自分がよく分からないというか…
もう避けないってさっき約束したばかりなのに、いきなり破っちゃってごめんなさいなんですけど。
私はもう一度寝返りを打つ、ようやくそこで電話は鳴り止んだ。
はぁ、ため息をこぼして私は部屋の明かりを消す。
もうこのまま寝てしまおうかな…。現実逃避とばかりに私は目をつむった。
「あ、だめだ。」
すぐに私は目を開ける、いけないいけないと体を起こした。
服洗わないとなんだった。
ベッドから立ち上がり、明かりもつけず風呂場を目指す。
馴れてるからテーブルなんかに当たらない、そう思ってたのに途中、テーブル上に置いていた、読みかけの雑誌に体のどっかが当たったのは動揺しているせいなのかな。
物音を立てて床にそれが転がる。
「あちゃー、いけない。」
落ちた衝撃で開いてしまったページを私は閉じようと手に取った。


