意地悪な片思い


 バスタオルで体をふきながら、携帯で時間を確認する。

15分ぐらいかな…入ってたの。

 入浴前の時間と今の時間の差はそれぐらい。脱衣と顔を洗っているうちに5分はすぐ経っちゃうだろうから、ほどよい感じだ。


 部屋着に着替え、洗面台で私は顔を洗い、化粧水と乳液を済ませる。洗濯機も回し始めると、洗面台に栓をして今日着ていたトップスをそこに置いた。

デリケートな素材ものは手洗いをするようにしてる。簡単に押しあらいするだけで、結構汚れって取れちゃうものだし。

でも……彼との電話をした後にしようかな、洗うのは。私は携帯を手にした。速水至という文字をタップして、電話をかける。

「もしもし。」

「…入ったの?」
 携帯の前で待ってくれていたのか3コール以内で彼は出てくれた。

「入りました。」

「よかった……ケッコウ早いですけど。」
 彼が冗談交じりに言う。

「いつも通りですもん。」
 …嘘だけど。

「私が入ってる間、何されてたんですか?」
 頭をふきながら私はベッドへと移動する。洗濯機のやかましい音が聞こえないように、お風呂場の扉とリビングの扉は閉めた。

「んー特に何も。強いていうならビール飲んでた。」

「あぁ、余りのやつですか?」

「そうそう。」
 枝豆はもうなくなったし、おつまみになるようなものあったのかな。

なんか作って冷蔵庫入れといてあげてたらよかったや。私も大概気が利かない。
お家にお邪魔させてもらったのに…

「速水さん。」

「なに?」

「あの、改まってなんですけど、今日ありがとうございました。」
 お礼だけはちゃんと言っておこう、特に何もできなかったんだから。

「え、何急に。」

「いえ、お家に突然上がらせていただいたので…。」

「いいよ。どっかに飲みに行くより、楽しかったから。」
 律儀だなと彼は笑った。

「ハンバーグおいしかったしね。」

「枝豆もおいしかったです。」

「ん、ありがと。」
 速水さんはまた笑う。