意地悪な片思い


「で、どうしたの?」

「いや、別に…」
 用という用はなくてですね。

「お風呂入りましたか?」
 不自然だけど、誤魔化すように私は話題を変えた。

「うん、さっきまで入ってて。それで出るの遅れたんだけど…あ、ちゃんと帰れた?」

「あぁはい、帰れましたおかげさまで。」

「そっか。」
 彼が今言った通り、お風呂上りらしくタオルで髪を拭く音が若干聞こえてくる。

「でも俺も風呂出たら、連絡しようとしてたから丁度よかった。」

「……ふーん。」
 なんか嬉しいな、速水さんも私と同じように思ってくれてたんだ。

「なんだよふーんって。」

「ふーんはふーんですよ。」
 素直に嬉しいとは言わないけど。

「市田はお風呂まだだろ?」

「はい、今お湯ためてて。」
 あと5分ぐらいかな、沸くまで。

「じゃぁそれまで喋ろうか。」
 彼の優しい声が耳に響く。

「…うん。」
 今日は速水さんデーだね。いっぱい話せるから。

 そう思った途端、「お湯が沸きました。」無情にもそう機械から知らされてしまった。

「あ、もう沸いた?」
 速水さんにも聞こえたのか、彼が若干笑う。

「…沸いちゃいました。」
 あははと私は笑った。

「あの、でも、5分ぐらいなら冷めないので。お話ししたいです。」

「いいの?」

「はい。」
 機械をすんなり裏切って私は彼と電話をつづける。