バスの時刻はっと……
「あと20分ぐらいで来るみたいです。」
「そっか。バス停まで5分かかるかかからないかぐらいだから、それまでもうちょっといな。」
私はこくんと頷く。
「何しようか。」
彼と私があと少しの時間つぶしを考えていると、彼の携帯のものと思われる音楽が部屋になり始めた。
「ごめん、俺だ。」
ポケットから携帯を取り出すと、もしもしと出る。
「木野どうかした?」
木野さん?どうやら電話のお相手は、速水さんのことが好きな彼女らしい。
「あー、それか。」
専門用語が何個か彼の口から呟かれる。
お仕事のお話か。私は黙って物音を立てないようにした。
木野さんにバレたら一巻の終わりだもの……。
「んー、そーそー。」
速水さんがちらっと私を一瞥する。
気にしないで電話続けてくださいと私はにこっと微笑んだ。微笑むぐらいしか、なんとも思っていないことを伝える手段が思いつかなかったから。
「月曜にまた聞くよ。」
速水さんは立ち上がってチェストの方へ向かう。
書類でも見るんだろうな。
まだまだ電話は続きそうなので、私はさっきバスの時刻を調べるのに使った自分のスマホの画面を、電源を付けることなくぼーっと眺めてた。
と。
「よっこいっしょ。」
へ?
「まぁまだ時間あるから、焦るな。」
「ありがとうございます!もう一杯でいっぱいで困ってたんですーっ!」
なんて速水さんの声だけでなく、木野さんの声も大きく聞こえてくる。
それもそのはず、速水さんが私の隣に座ってきたから。
おまけに床に這わせてた私の手に、彼のそれも重ねてるんだ。
「ちょ、」
はやみさんって言おうとしたところで、彼はしーっと人差し指を口前に立てる。
「どうかしたんですかー?速水さん?」
尋ねてきた木野さんに、何でもないと彼は告げた。
手を彼のから抜かそうと思っても、
ぎゅっと上から押さえつけられてるせいで私はどうすることもできない。
あーもう、今日は何もなしだって思ってたのに。
最後の最後で、どうやら私は大きな意地悪をされちゃったみたいだ。
結局しばらく、私はそのままの状態で彼らの会話を聞いていた。


