意地悪な片思い


 部屋着の速水さんとキッチンに一緒に立ちながら、夕食を作り始める。

私はフライパンの前、彼はお鍋の前。速水さんの家は広いってのに、二人並んでコンロの前に立ってる。

「いい匂い。」

「枝豆も。」
 たまにちょっと褒め合いをこぼす。

だけど私がハンバーグをひっくり返そうとすると、

「いて。」

「あ、ごめんなさい。」
 てな感じで、私の右手が彼の体のどっかに当たっちゃうんだよね。

それはハンバーグをキッチンの奥側のコンロで焼いているせいなんだけど。
枝豆を奥にするべきだったね、って最初彼に当てちゃったとき笑いながら話した。

「枝豆もうちょっと蒸します。」

「はい。」
 お鍋の火を止め、蓋をしたまま枝豆を数分蒸す恰好をとる。

「では私はひっくり返します。」

「いて。」

「まだ、当ててないでしょうが。」
 彼の冗談に私は思わず笑った。速水さんも口元を緩めてる。

 なんかね、ひどい妄想なんだけど、スーパーに彼と行って、一緒にこうやって料理して。
まるで同棲してる、みたいじゃない?下手したら結婚してる、みたいな。って私、この間もこんな妄想してなかったっけ。

「どうかした?」

「や、別に。」
 私は慌てて視線をハンバーグに変えた。
ハンバーグをひっくり返していく。

「もうよさそうですね。」
 いい焼き色が両面についたので、用意していたお皿に盛った。ふたりで2個ずつだから、焼いたのは4個。速水さんの要望で、今日は定番のソースで味付けだ。

フライパンにソースの材料を適量ずつだして、肉汁を含ませる。

「美味しそう。」
 なんて言ってくれた、速水さんのお墨付き。

 枝豆もそろそろできたのか、彼も蓋を取ってざるに枝豆を落とした。いかにも熱そうに、白い湯気をもくもくと立ててる。

「片づけ後にして、出来立て食べよ。」
 そうですねと私は返事して、出来上がったそれらをテーブルの上に運んだ。