意地悪な片思い


「……もう寝ますよー、おやすみなさーい。」

「ごめん、ごめん。」
 焦って謝ってきた速水さんに、ばかってまた一回言葉を落とした。


「でも速水さん眠そうですから、今日はここまでにしましょうか。」
 私は布団の中で寝がえりを打つ。

「じゃぁ次は来週の飲みのときね。」

「はい。」
 そういえば、初夏になってから初めてのデートだ…。
暑い季節でのデートってやけにどきどきしちゃうんだよなぁ、薄手で肌の露出が多いせいか分かんないけど。
なに、着ようかな…

「市田、おやすみ。」

「はい、おやすみなさい。」
 私は彼が電話を切ってくれるのを待つ。

1秒、2秒、3秒……あれ?
速水さんなかなか切らないな。

「市田?切っていいんだよ。」

「え?あ、はい。」
 速水さんも私が切るの待ってたんだ。

「じゃぁ切りますね。」

「おやすみ。」

「おやすみなさい。」
 数秒待って私は電話を切った。

 何人か付き合った人いるけど、切るの待ってくれてた人なんてはじめてだなぁ。そういえば、この間の電話も私が切るの待ってくれてたっけ…。

通話履歴の速水至という名をじっと見つめる。

すると、メッセージが届いたことを知らせる音が鳴り響いた。

「誰かな、こんな遅く…。」

『電話ありがと。飲み楽しみにしてるから、おやすみ。』

速水さんだったのか。
わざわざ終わったあとも連絡くれるなんて。こういうとこ、速水さんずるい。

『こちらこそ。ゆっくり寝てくださいね。』
 そう文字を打ちながら、一緒に飲んだ時にまたお礼言おうなんて思った。

たぶん、「はぁ?普通だろ」って
彼は照れ隠しで言うんだろうなぁと想像もしながら。