「あ、飲むのさ。」
「はい。」
「えっと、再来週の金曜でもい?」
「はい、大丈夫です。」
彼はスケジュール帳でも開いていたのか、携帯の向こうでパタンと本が閉じられた時のような音が聞こえた。
「なら決まり。」
そういえば、電話をする目的は飲む日の日程を決めるため、だったんだよね。脱線して、この間はお互いの過去の話をすることになっちゃったけど。
日にち決まったってことは、もう電話終わりなのかな。
「何話す、今日。」
「ん?」
「俺、話題そんなないよ。」
速水さんがいつものトーンで言葉を紡ぐ。
「そうですね。」
私は表情を綻ばせながら話題を考える。
当たり前みたいに、速水さんが電話を続けてくれたのが嬉しかった。
「あ、そうだ、今日仕事一つうまくいったんです。一発で企画書オッケーもらえて!」
速水さんに言いたかったんだよね。
「よかったじゃん。頑張ったんだな。」
えらい、えらいとばかりに褒めてくれる。
速水さんに褒められるために仕事頑張ったわけじゃないけど嬉しいや。
「これからも頑張ります。」
「うん、俺も頑張んないとな。」
優しく答えてくれる。
こういうのっていいな、お互いの英気を供給しあうみたいで。速水さんの力にほんのちょっとだけでもいいから、私もなれてるのかなもしかして。


