意地悪な片思い


「好きなものって。」

「なんですか。」
 電話の向こうで速水さんが笑う声がする。

「分かったいいよ、好きなものね。」

「食の好みって大事なんですからね。」
 まだばかにしてる風の彼をたしなめた。

「好きなもの…うーんやっぱ肉かな。」

「肉食ですもんね、速水さん。」

「いやいやいや。」
 若干いやがってる彼を私はふふふと笑う。

「市田は?」

「私はさつまいもです。焼きいもとかスイートポテトとかおいしくて。」
 夕食とったってのに、なんか無性に食べたくなってきたよ。

「確かにおいしいね、おなら出るけど。」

「人前ではしないですもん。」

「ふーん。」
 不信がってる彼をおいといて、 私は嫌いなものは何ですかと次聞いてみる。

「豆。」

「豆?」

「そー、枝豆ぐらいかなおいしいと思うのは。」

「美味しいですよね。」
 私は飲み会で、速水さんと枝豆を一緒につついた時のことを思い出した。

「私もでも、インゲンがだめなんですよね。あとそら豆とグリーンピースも苦手で。」

「わかるわかる。同じだね。」
 優しいトーンで速水さんは同意した。

電話って声が耳に直接聞こえる分緊張しちゃうけど、顔が見えないことで話しやすさもある。
なんか素直に喋れちゃうな。

そのまま私たちはいろんなことを質問しあった。
血液型、生年月日、趣味――…

私は誕生日が10月だから何てことはなかったけれど、

「え?速水さんバレンタインが誕生日だったんですか!?」

「うん。」
 っていう、もっと早くに知りたかったことも分かって時々私たちは争う。

「何かしたのに…。」

「ハグしたじゃん。」

「あー!」
 あの日彼が積極的だったのは、チョコのせいだけじゃなかったってことも知れた。