意地悪な片思い


 シートベルトもびっくりしたのかもしれない、速水さんが「コンビニ行く?」って言うときと同じ口調で、そう私に言ってきたから。
思えばそう。初めて給湯室で彼が告げてきたあのセリフと同じ。彼の表情、口調も。


え?え?え?
 間抜けみたいに口がぽかーんと空いてる私を見て、クスっと彼は破顔した。

「か、からかったんですね!」
 かーっと私の頬は勢いよく上気する。

一瞬とはいえ、真面目に受け取ってしまったじゃんか!

速水さんは余裕そうに笑ってそんな私を眺めてる。

さすがにひどい!
真剣な悩みをちょっとだけとはいえ打ち明けたってのに、冗談で返してくるなんて!


「もう帰ります。」
 私はドアノブに手をかける。

「俺と付き合うこと考えてるんだったら、結婚のことも考えておいて構わないって言ってんの。」
 速水さんは私の頭をポンと撫でた。

「じゃ、おやすみ。」
 優しい笑みを浮かべる。

「…えっと、」
 ん、あれ?結婚って話はからかいだったんじゃないの?でも今言われた言葉は冗談ではないよね…。

じゃぁ本気ってこと…ん?

だけど、本気なのか冗談で言ったのかよく分からないし、今はとにかく

「おやすみなさい?」