意地悪な片思い


「あの、速水さん。」

「ん?」
 車通りが少ない道に入ったせいで、車内がやけに静かさを増す。

「……またふたりで飲みたいです。」
 怖気ずに私は呟いた。ちっちゃくは、なってしまったけれど。

「キス魔になるから嫌だったんじゃないの?」
 からかって彼はそんなことを言う。

「…この間結局ならなかったじゃないですか、だから。」
 うん。

そんな私の様子を見てか、彼はクスッと笑った。

「いいよ。じゃぁ、今週末電話してきて。」

「電話?」

「日付決めないと。」

「あ、はい。」
 
「楽しみ?」
 今度はちょうど赤信号に止まっちゃって、彼は私の顔を覗き込むようにからかって聞いてくる。

「……楽しみですよ。」

「ふーん。」
 前の車のブレーキランプが明るいせいか知らないけど、速水さんの頬をもっと真っ赤に染めてた。たぶん、助手席の私のも。


 青になると同時に、速水さんは2つ目の信号を右に曲がった。

「ついた。」
 駐車場に入りながら彼はつぶやく。もう送ってもらうの2回目なんだっけ。

「あ。市田ごめん、人いるからちょっと待って。」

「はい。」
 私の隣の部屋の人か分からないけれど、同じアパートの住人さんがちょうど車で出るとこだったらしい。速水さんは隅の方に車を寄せられた。

「…カップル?そんなに部屋広いの?」
 速水さんが私に首をかしげてくる。

「いえワンルームですけど、気にせず同棲されてるみたいですね。」
 私もその人たちの姿を視界にいれることができた。

確か、私の下の階の住人の人だったはず。車がすれ違うその時に、ぺこりと頭を下げる。

「…同棲か。」
 速水さんは一度呟いて、車を進めた。

「どう思う?」

「どうって…?」
 私は聞き返す。