意地悪な片思い


 と、丁度信号が赤になり車が止まる。

「あ、速水さん、明日の会議何時からになりました?」
 内川くんは思い出したように、彼に尋ねた。

「14時。」

「了解です。」
 内川くんは胸元からメモ帳を取り出し、メモを書き落とす。時間以外にも何か書いているのか、せわしなくペンは動いている風だ。

「…お仕事大丈夫ですか。」
 私は速水さんの思わずそう言葉をかける。
内川くんからさっき、「俺が気にかけてますから」って言葉を貰ったばかりなのに、それすら忘れて私は速水さんに尋ねてしまっていた。

「大丈夫だよ、市田は?」

「…はい、私も。」
 前の座席のブレーキランプが速水さんの頬に反射して、赤く染めている。たぶん、私の頬も。

「さっきも市田さん、速水さんのこと心配してましたよ。」
 内川くんがクスッと笑う。

「風邪ひいたばっかだから。」
 慌てて私は誤魔化すように、

「もう熱でたの1か月も前だけどね。」
 そう速水さんにクスッと笑われてしまったけれど。


 それから他愛もない話で盛り上がり、ほどなくして内川くん宅に着くと車内を盛り上げていた彼に、お疲れさまと告げた。
彼がバタンとドアを閉じると、私たちの間に静かな空間が広がる。

内川くんの存在って大きんだなと改めて思った。飲み会の時も、彼がいないのといるのとじゃだいぶ違いそうだ。


「…じゃぁ行くか。」
 速水さんがシフトレバーをPからDに変える。

「お願いします。」
 膝に置いている鞄を抱える手に自然と力が入った。

「道分かりますか?」

「んー大丈夫。」
 速水さんは進んですぐの道先を左へと曲がる。私が知らない道だけど、たぶん私の家に繋がっているんだろう。

「あの、速水さん。」

「何?」
 内川くんがいて、聞けずにいたことを私は口にする。

「……内川くんに話してるんですか?」

「何を?」
 何をって…そう言われると困るけど、

「わ、私たちのこと?」

「何だそれ。」
 速水さんは少し笑った。

「いや、話してないよ。話していいんだったら話すけど。」

「や、だめですよ!」

「冗談。」
 彼はからかうような口調でまた笑う。