意地悪な片思い


「あ、速水先輩といえば。すごいんですよ、知ってます?」

「何?」

「今年の新入社員にもモテてるんですよ。」
 ひそひそ声で彼は言った。階段は思ったよりも響いちゃうから、それを気にしてるのかもしれない。


「すごいですねって先輩に言うと、アホか、そういうの気にする前に仕事ってまた怒られちゃって。」
 彼はブーンと持ってくれているゴミ袋を大きく振った。

「まぁそういうのひけらかさない人じゃない、速水さんって。
でも、なんかあれだね。
みんなアピールとかしてるのかな、木野さんみたいに。」
 自分じゃろくに行動できてないくせに、ほかの人のアタックは気にしてしまう…、私って最低だな。


 階段は終わりをつげ、1階のフロアに私たちは降り立った。

「市田さんあれですよ、俺見てたら分かるでしょ?男なんてね、アタックされたらころっといっちゃうもんですよ。

速水先輩も男ですから。
もしかしての可能性にみんな賭けてるんじゃないですかねー。」
 もしかして、か。

「市田さんも自信もって何でもやった方がいいですよ。
仕事も恋愛も全部一緒ですよ。よーは。」

「……そう?」

「って、速水先輩が言ってました。」

「え?」

「速水先輩と恋愛トークたまにするんですよ。」
 にやっと内川くんは笑いながら、私の手のゴミ袋もむんずっと奪って、二つポーンとゴミ捨て場に投げた。


「あの、速水さんに何か聞いてたり…?」

「さぁ。」
 含み笑いで内川くんは先に踵を返して歩き出す。

「う、うちかわくん!?ちょ、ちょっと!」

「帰りますよー。」
 私の声を無視して、彼は先々歩いていく。

強引なところ、ちょっと速水さんに似てきてない?内川くん!