意地悪な片思い


 この日も残業を終え、私はパソコンをシャットダウンさせる。ぐーんと小さく伸びをすると席から立って、椅子にかけていた薄い上着を羽織った。

あーようやく終わった。

そんな風にため息を思いっきりついてしまいたいような心労具合。私だけじゃなくて、ほかにも残業で残っている人がいるからできないけど。


 残業を始める前に用意していたコーヒーも、今ではすっかり空。無くなったコーヒーの紙コップを持ち、給湯室へと捨てに行く。

 メインルームの扉を開け、廊下に出た途端、いかにも夜のオフィスというような静かな雰囲気を感じた。パソコンのキーボード音も消え、まるで私しかオフィスにいないような感覚に陥る。

 そう感じた通り、扉を開けた給湯室も中に誰もいない。

しかし、
「ゴミ一杯だ。」
 ゴミ箱の中は可燃物でわんさかしていた。隣のプラスチックごみの中もいっぱいで、今にもあふれそうとばかりにゴミの嵩みで押された蓋が若干浮いている。

掃除当番の人、給湯室のゴミ箱チェックするの忘れてたのかな。
……どうせもう遅いんだしついでにしちゃおうか、1階のゴミ捨て場に持っていくだけだしね。

そう思って私は二つともゴミ箱から取り出すとビニール袋の頭を縛り、そのまま1階へともっていった。


階段を重い足取りで一段一段降りていく。と、途中、

「お疲れ様。」

「あー、内川くん。」
 雨宮さんたちの部署がある1階下のフロアで、内川くんに遭遇した。

「もう上がりですか?俺も丁度終わったところなんですけど。」
 私が両手に持っているゴミ袋に若干彼は注意を奪われつつも、私の顔を見て言葉を発する。

「あぁうん、終わったとこ。これ、給湯室いっぱいになっててね。」
 見せびらかすように私は少し、ゴミ袋を上にあげて見せた。

「じゃぁ俺も手伝いますよ、一個貰えます?」

「ありがとう、ごめんね。」
 彼のやさしさに甘え、私はプラスチックごみの方を彼に差し出す。

「いえいえ。」

 私たちは一緒に、更に下の1階へと降り始めた。