意地悪な片思い


「速水さんって。」

「ん?」

「人気、ですよね?」

「……何それ。」
 ぷっと彼が小さく噴き出したように笑う。

「内川はまぁ分かるけど、市田に言われるとは。」

「だってそうじゃないですか…
あのいつから私のこと、そう…なんですか?やっぱり聞きたいです。」
 この間は口にしてくれなかったけど、私速水さんから直接聞きたいよ。

推測を断定に変えてほしいよ。
勝手だけど私、今なんだか不安。

「そういうことって、なに?」
 クスッと速水さんが笑った。

「…分かるでしょ」
 私はちらっとマスターの方を見る、比較的近い場所でグラスを白い布でふいていた。この距離なら絶対会話は聞こえてるはずだ。

「じゃぁなんでそんなこと聞きたいの?」
 速水さんはからかったような目で私を見つめる。

「速水さんのこと好きだから」とは言えない。絶好のチャンスなのに。
だって、

「……お、お店の人が聞いてるから。」

「お店の人がいなかったら言えるの?」

「う、も、もう。」
 さっきまで全然こんな雰囲気じゃなかったのに。仕事だけみたいな雰囲気だったのに。

「ごめんごめん、からかいすぎた。」
 速水さんは次のカクテルをマスターに頼む。

あーあ。

「…結局、今日もお預けですか、答えは。」
 思わず私はつぶやいた。

「聞きたかった?」
 私は少し黙って、こくんと頷く。

「素直だね、そういうトコだけは。」
 見透かすように速水さんは言った。

そういうトコだけって。
まさか速水さん、またまた見透かしを披露して、実は分かっちゃってるんじゃないだろうね?好きって言いたいけど言えない私の気持ちをさ。

…ってさすがに無理、だよね?


「じゃぁ代わりに、俺が酔ったらどうなるか知りたい?」
 そういえば、そんなこともこの間話したっけ…
でもなぁ、今の流れじゃ速水さん、とんでもないこと言ってきそうだしなぁ。

「……ど、どうなるんですか。」
 そう思っていても、結局私は聞いてしまった。気になる気持ちが勝っちゃって。

クスッと笑って彼は私の耳元に近づく。
キョリが近づくのと、呟かれるのとで、まるでスローモーションみたい……

「は、はやみ…さっ」

「聞きたいんでしょ?」
 自然と構えてしまった手を彼に捕まえられた、

「……キス魔。」
 彼の低温が耳に響いた。