でも、確かに速水さんと話すようになるまで、私にとって長嶋さんが憧れだったんだよね。
速水さんとのことがなきゃ、私にとって長嶋さんが一番身近な人。優しくて、面白くて、人格者で。
まぁそのまま長嶋さんの傍にいて、好き、っていう気持ちに繋がったかっていう難しい話は置いといて。
「市田。」
「なんですか。」
だけど、今こうして隣にいる速水さんと関わりを持つようになって、いろいろ変わっちゃった。
意地の悪い人だなーって最初は避けてたのに、どんどんどんどん気になっていっちゃって。
「さっきの冗談。
食べてるとこいいなって本当思うよ。」
ほら、今だって、
こうしてたまに見せる甘い言葉に、私は強く惹かれちゃってる。
その姿を私はいつも見てしまう。不器用なこの人を知りたいと思ってしまう。
「速水先輩ー、市田さーん。」
私と速水さんは後ろを振り返った。追いかけてくる内川くんの姿がかすかに見えて、その場で足を止める。
「あ、内川くん。」
私はぽつりと彼に告げた。
「まだ俺と二人っきりがよかったの?」
クスって笑う彼。
「は、はぁ!?」
「冗談だよ、怒んなって。」
そう言いながら速水さんは笑ってる。
もう、本当この人は。
「……でもそうですね。」
「え?」
「今日はもう結構話せたからいいですけど、ちゃんと埋め合わせしてくださいね。
次は……ふたりっきりですからね。」
好きって伝えなきゃなんだから。