「まぁ見てたら分かるよ。分かりやすいからさ。市田の目とか。」
らしくなく、彼は口ごもった。
こういう時の速水さんは、隠しごとをしてたりする。何度か経験済みなことだから私は分かっちゃうんだ。
しかも大抵その隠し事っていうのはマイナスなことじゃなくて、むしろ私にとって嬉しいことだったりするんだよね。
「……いつからですか。」
「あーもう。うるさいぞ、市田。」
彼は少しそっぽを向く。答えたくないとばかりに。
あと何回聞いたって、そうなってしまった速水さんは絶対答えてくれない。だから、私は黙って自分で答えを見つけ出す。
そうしているうちに、私は何となく、なんとなくだけど分かってしまった。
きっと、告白してくれる前から
彼は私のこと見てくれてたんだってことに。
給湯室で彼が付き合わない?って告げてきてくれたのは、きっかけに過ぎなかったんだよ―――彼が私に思いを伝えてくれる。
速水さんはうんともすんとも言わないから正解か分からないし、それらは私の憶測にすぎない。けど、私の考えだと速水さんが照れてることに繋がる。
告白よりも前から気になってた、なんて速水さんがすんなり言ってくれるワケないからね。
「速水さん、照れてますね。」
私はそっぽを向いた彼の顔を覗き込むようにして、話しかけた。
「うるさい、大食い。」
「あ、またそういうことを言うんですね。」
さっきもそうやってからかってくれちゃって。
私、速水さんに意地悪されたこと全部覚えてるんですからね。
優しくされたことも覚えてるけど。