「飲み会の時の。」
誤魔化すように私は話題を変えた。
「んー、」
「なんで私だって言ったんですか。」
「…何でっておかしいでしょ。市田なんだから。」
平然と言ってのける彼。
「う、うるさいな。」
自分が聞いておいたくせに、改めて私の名を出せれて私はまた照れる。
「反応可愛すぎ。」
からかったように、速水さんはぐしゃっと私の頭を撫でた。こういういちいちドキッてなるようなこと、彼は素でやってのけるんだからずるい。
「でも、市田は長嶋って言うと思った。」
はぁっと速水さんは空中に息を吐いた。もう、道は飲食店街を抜けて住宅街に入ってる。
夜は閑散としてる道。
「…何で分かったんですか?」
「んー、何となく。」
何となくで分かっちゃうもんなのかな?
「っていうのは嘘で。」
「嘘?」
「うん。」
速水さんはクスッと笑う。
「市田のこと見てたからかな。」
そして、照れたように後ろ髪をかいた。
「見てたって…いつからですか。
最初お話しした時ですか?」
私が今言った、最初話したってのは速水さんに一番はじめに突然告白されたときのこと。
告白ってワードを口に出すのは、私的にはちょっとハードルが高いから、つい他の言葉を使って誤魔化しちゃう。


