意地悪な片思い


「で、市田は?」

「へ?」

「市田は?」
 速水さんが私に視線をやりながら、私の名前をまた会話にあげる。

「そうだそうだ、市田さんのまだ結局聞いてなかったですもんね。」
 誰ですか?と内川くんがサラダを口にいれる。

このままいけば、私答えずに済んでたのに。速水さん余計なことしてくれちゃって。

わざとらしく速水さんは口端を緩めてる。そんなに私の反応伺うの楽しいですか。

「まぁ……、」
 私は隣に座る長嶋さんをちらっと覗いた。

「タイプは長嶋さん…かな。憧れだし。」
 タイプだからね、答えるのは好きな人じゃないから、うん。

「照れるななんか。」
 長嶋さんは後ろ髪を数回かいた。

「照れないでくださいよ。」
 私も彼の反応に恥ずかしくなってお酒を飲む。

「初々しいカップルみたいになってますよー。」

「長嶋さんも市田さんもウブですね。」
 内川くんと木野さんが私たちを軽くはやし立てる。

 速水さん、長嶋さんと仲いんだし、出したのが彼の名前だったら別になんとも思わないよね…?

ちらりと様子をうかがうと丁度良く、速水さんはぐいっとお酒を飲んでいた。